移動販売の様子
大正13年の創業以来、家業として地域に密着した「おとうふやさん」を営んできた森徳とうふ店は、大型店などの進出がすすむ中、一時は事業継続の難しさから廃業の危機もありました。しかし3代目となる森新一氏は、豆腐屋という古くからの産業の形を現代の地域社会によみがえらせ、再び命を吹き込むための「鍵」として障害のある方の力に着目。とうふの製造・販売と障害者雇用を結びつけることで見事に事業を継続しました。更には移動販売のエリア拡大がそのまま障害者雇用の拡大に結び付くその取組みは、地域の方々に理解され求められる事業に成長しています。
森氏はまた、姉妹店である涌谷とうふ店を「障害福祉サービス事業所」として運営しています(就労継続支援A型事業所)。ここではスタッフは訓練を兼ねて働いていますが、ここで経験を積み販路を築けば、将来的に「本店」である森徳とうふ店へ一般雇用される可能性が開けます。明確な目標を持ちやすいことが、スタッフ一人ひとりのやる気を引き出します。
また、森徳とうふ店では、日頃より売上と運営費との関係も包み隠さずスタッフで共有。全てオープンにすることで不信感が払拭されると共に、自らの販売努力が直接お店の発展やお給料に関係する、という気概と自負が自然に育ちます。
豆乳の袋詰め作業
製造現場では、豆腐や豆乳などの製造を一つひとつ丁寧に教えています。日々の反省点や良かった点は「連絡ノート」に記載、本人と指導者のコメントは家族にも共有されます。日頃から家族との情報共有が図れるため、本人だけでは解決できない問題も、いち早く家族や施設の連携により解決され、安定した雇用の継続につながります。
地域密着の小規模店舗でも、アイデア次第で社会に大きく貢献できるという好事例であり、このような事業者が多く現れることに期待したい。今後の事業展開により、更なる障害者雇用の可能性が感じられる。また、アイデアのみならず受入態勢もきめ細かく整っている。